愛媛県保険医協会は、10月25日に加藤勝信厚生労働大臣、寺田稔総務大臣、愛媛県出国会議員へ「保険証で安心して受診できる国民皆保険制度を守るべき~「24年秋の保険証廃止を目指す」大臣会見について撤回を求める~」理事会声明を送付しました。

 

【声明】

保険証で安心して受診できる国民皆保険制度を守るべき
~「24年秋の保険証廃止を目指す」大臣会見について撤回を求める~

 10月13日、河野太郎デジタル大臣は「2024年度秋に現在の健康保険証の廃止を目指す」と表明した。政府はマイナンバーカードを普及させたいがために保険証の廃止を利用し、患者・国民と医療現場を混乱に陥れている。

 「国民皆保険」は1961年に成立し、乳幼児から高齢者までの健康と命を守り、日本の経済成長に大きく寄与してきた。半世紀以上続いている現在の保険証制度に何ら問題はない。保険証の廃止は国民皆保険制度を採用する我が国において、マイナンバーカード取得の事実上の義務化に等しい。マイナンバーカード取得は「任意」とする法令に明らかに抵触するのみならず、プライバシー権や思想・良心の自由など憲法違反の疑いが極めて強いものと言わざるを得ない。

 当協会では現在医療機関の協力のもと、患者さんに「マイナンバーカードの保険証利用アンケート」を実施している。(速報値)では、「マイナンバーを取得した」との回答は56.7%であったが、そのうち、「保険証として利用する」と答えたのは41.2%に過ぎなかった。また、マイナンバーカードについて心配していることはあるかの問いには「紛失」70.6%、「個人情報の漏洩」64.7%、「他人に悪用される」47.1%、「特殊詐欺被害」17.6%などの回答が寄せられた。一方、「マイナンバーカードを取得していない」と回答した人は43.3%いた。取得しない理由は「取得する必要性を感じられない」53.8%、「個人情報の漏洩が心配」53.8%、「特殊詐欺被害が心配」30.8%、「身分証明書になるものは他にある」46.2%、「個人情報の紐づけが嫌」46.2%であった。今後マイナンバーカードを取得するかとの質問では、「取得したくない」30.8%の回答に対し、「取得する」は0.0%であった。

 多くの患者・国民がマイナンバーカード使用に不安を抱き、カード取得者すら保険証利用を躊躇していることが明らかとなった。このような中で保険証廃止を強引に押し付けることは国民主権・民主主義にもとるものである。

 マイナンバーカードを保険証として利用した場合に起こりうるトラブルやリスクも置き去りにされている。マイナンバーカードが常時携帯されることとなれば、院内含め紛失・盗難等のトラブルは各段に増え、個人情報流出や経済的被害などのリスク拡大は図り知れない。医療機関では、常時オンライン接続に伴うセキュリティ対策強化が求められる。窓口ではマイナンバーカード紛失・更新切れ・破損時への対応の負担が増えることが予想される。さらに、停電・システム不具合時などには資格確認が困難となり、診療に多大な支障が生じかねない。大規模な災害・システム障害ともなれば、医療現場が大混乱することは必至である。これまで同様、保険証は原則交付、マイナンバーカード利用は自由とする形が合理的であり、保険証廃止はリスクヘッジの上でも不合理と言わざるを得ない。

 本会は、患者・国民の命と健康を守る医師・歯科医師の団体として、政府に対して「2024年秋に保険証廃止を目指す」方針について撤回を求めるとともに、保険証で安心して受診できる国民皆保険制度を守るよう強く要望するものである。

 

2022年10月25日
愛媛県保険医協会理事会